ここでは、暴落兆候シグナルを、(本当は結構な数あるんですが)以下の3つに絞ってご紹介します。
・逆イールド現象
・バフェット指数
・金価格の上昇
(1)逆イールド現象
米国債の2年モノの利回りが、10年モノの利回りを上回っている状況のことを、逆イールド、といいます。
本来、お金を貸す側の理屈でいうと、誰かに短期間お金を貸すよりも、長期間貸すほうが、貸したお金が返済されないリスクが大きいはずなんですね。だから、順当にいくと、長期の債券の金利は、短期の債券の金利よりも高くなって当然なんです。
それが逆転するのが、逆イールドです。
背景としては、物価高騰への対策として、ある国(例えば米国)の金融当局が、景気の減速という代償を払ってでも、物価高騰を抑えるべき、と判断して、金利を上げていく、ということをやります。
物価高騰がなかなか手ごわくて、何度も利上げを積み重ね、金利が高止まりした状況では、平常時とは違って、逆イールドが発生しやすい、というような、ざっくりした理解で、まずはよいかと思います。
そして、逆イールドが発生していた状態から、逆イールドが解消された状態に移行した後、景気後退(リセッション)が起きる可能性が非常に高い、と言われています。
深刻なリセッションには至らず、ごくごく軽い株価の低下ですめば、それを「ソフトランディング」と表現したりします。
でも、逆イールドが解消した後に、リセッションにならなかった事例は、近年、ないんですね。
もしソフトランディングに成功したとしたら、近年稀に見る大成功を米国の金融当局がやってのけた、ということになるんですが、果たしてそうなるや否や。
日本で新NISAが開始されたのは2024年1月ですが、2023年後半は、ばっちりしっかり、逆イールドが発生していまして、今なお継続中です(本記事執筆時点)。
そろそろ、逆イールドが解消、というイベントが起きてもおかしくない時期に差し掛かっている、と見ている市場プレイヤーは、多い、というのが、現在の状況です。
(2)バフェット指数
バフェット指数は、株価が割高なのか、割安なのかを判断する指標の一つです。
という数式で、パーセンテージで表現されます。
一般的に、株価が割高でも割安でもない、と言える水準が、概ね 80%~100%、で、2023年後半から2024年初頭あたりの米国のバフェット指数は、200%程度、のようです。
これは、相当に株価が(本来の実力値よりも)過大評価されている、ということを示唆しています。
今より半分に株価が下がったとしても、バフェット指数の観点でいうと、下げすぎではなく、適正な水準に戻っただけ、という見方があるんだ、というかんじで捉えていただければ、と思います。
(3)金価格の上昇
金(ゴールド)は、「安全資産」の筆頭格です。
本来、米国の経済が本当に順調で、これからもますます伸びていく、が、市場のコンセンサスだとしたら、わざわざ安全資産である金(ゴールド)を買いにいくよりも、株に投資してその値上がりを狙いますよね。
米国の株価は、2023年後半に、まずまず順調に上がっていきましたが、一方で、金(ゴールド)の値段も、上がっていっています。
我々よりももっと、景気や株価のトレンドの変化に敏感な人たちが、手持ち資産のうち、株式比率を下げて、金(ゴールド)を買いに走っている、という可能性が、一つ考えられます。
ゴールドの値段は、他の要因で上下することもあり得るので、この現象単体で、株の暴落や景気後退が予想できる、というものではありません。他のさまざまな兆候と合わせて総合判断するもの、という捉え方が、良いかと思います。
★まとめ
これらを総合的に見て、新NISAが開始された 2024年1月、というのは、米国株の暴落が、確実とは言えないまでも、市場のプレイヤーのうち一定割合が警戒するような、まさにそういうタイミングなんだ、ということを、私は言いたかったので、この記事を書きました。
S&P500かオルカンか、みたいな議論、ありますが、米国株が暴落したら、S&P500も、オルカンも、同じように価値が下がります(オルカンだって、過半はアメリカ株で構成されていますから)。
長期的に見れば、暴落時期を乗り越えてなお、倒れずに立ち続け、積み立て投資を続けて、将来株価が回復した暁にはしっかり資産形成できている、というのが、「投資初心者でも資産形成を成功させられる再現性の高い方法」として推奨されていて、そのこと自体は事実だと思っていますが、
投資初心者であるがゆえ、暴落兆候シグナルが点灯していることにも気づかないし、気にしてもいない、という人が、S&P500やオルカンを買いまくった後に、米国株が暴落する、ということも、想定される近い将来の可能性のうちの一つだ、ということを、頭の片隅にでも入れて行動していきたいものです。